(1) 外国親法人株式等の交付を受けた場合の課税
- ① 非居住者株主
恒久的施設を有する非居住者が、その保有する株式を発行した内国法人の行う特定合併、特定分割型分割又は特定株式分配により外国合併親法人株式、外国分割承継親法人株式又は外国完全子法人株式の交付を受ける場合には、その交付を受ける外国合併親法人株式、外国分割承継親法人株式又は外国完全子法人株式の価額に相当する金額は、その有する株式が一般株式等に該当する場合には、一般株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額と、上場株式等に該当する場合には、上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税する(措法37の14の3①~③)。
恒久的施設を有する非居住者が、その保有する株式(旧株)を発行した内国法人の行う特定株式交換により株式交換完全親法人に対しその旧株の譲渡をし、かつ、外国株式交換完全支配親法人株式の交付を受けた場合には、その旧株の譲渡に係る譲渡所得等について課税する(措法37の14の3④)。 - ② 外国法人株主
外国法人が、その保有する株式を発行した内国法人の行った合併、分割型分割又は株式交換により、その対価として外国法人の株式(合併、分割型分割又は株式交換の直前に合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある外国法人の株式に限る。)の交付を受けた場合又はその保有する株式を発行した内国法人が行った株式分配によりその対価として完全子法人の株式等の交付を受けた場合には、恒久的施設管理外国株式が交付される場合を除き、旧株の譲渡については簿価譲渡を認めず、譲渡損益が認識される(令184①十九④(令和4年4月1日以後は、令184①十八④))。
国内に恒久的施設を有しない非居住者についても、その有する株式につき左記と同様の組織再編成が行われた場合において、その所得が国内源泉所得に該当するときは、同様に課税される。
ただし、恒久的施設を有しない非居住者については、管理すべき恒久的施設を有しないことから恒久的施設管理外国株式の課税繰延べ(下記(2)①参照)の適用はない(措法37の14の3⑧)。
恒久的施設管理外国株式とは、恒久的施設を有する非居住者が恒久的施設管理株式に対応して交付を受けた交付外国株式等をいう(令184④)。
(2) 恒久的施設を有する非居住者等が交付を受けた外国法人株式の課税
- ① 恒久的施設管理外国株式の交付による課税繰延べ
国内に恒久的施設を有する株主である非居住者等が組織再編成により恒久的施設管理外国株式の交付を受けた場合に、その交付を受けた株式が恒久的施設管理株式に対応して交付されたものであるときは、一定の要件の下に課税の繰延べが認められる(措法37の14の3①~④、令184①十九④(令和4年4月1日以後は、措法37の14の3①~④、令184①十八④))。 - ② 恒久的施設管理外国株式のみなし移転
非居住者等が、その有する恒久的施設管理外国株式の全部又は一部をその交付の時にその恒久的施設において管理しないこととなる行為を行ったときには、その行為が行われたときに、その交付の時に恒久的施設において管理した後、直ちに当該非居住者の恒久的施設と事業場等との間で恒久的施設管理外国株式の移転が行われたものとみなして恒久的施設帰属所得を計算する(措法37の14の3⑤、措令25の14①、令184③)。
(3) 用語の意義
合併等により外国法人株式の交付を受ける場合の課税に関する用語の意義は以下のとおりである(措法37の14の3⑥)。
- ① 特定合併
合併で、被合併法人の株主等に外国合併親法人のうちいずれか一の外国法人の株式以外の資産(株主等に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産及び合併に反対する株主等に対する買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されなかったものをいう。 - ② 外国合併親法人
合併の直前に合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国法人をいう。 - ③ 特定分割型分割
分割型分割で、分割対価資産として外国分割承継親法人のうちいずれか一の外国法人の株式以外の資産が交付されなかったものをいう。 - ④ 外国分割承継親法人
分割型分割の直前に分割承継法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国法人をいう。 - ⑤ 特定株式分配
株式分配で、現物分割法人の株主に外国完全子法人の株式以外の資産が交付されなかったものをいう。 - ⑥ 外国完全子法人
完全子法人である外国法人をいう。 - ⑦ 特定株式交換
株式交換で、株式交換完全子法人の株主等に外国株式交換完全支配親法人のうちいずれか一の外国法人の株式以外の資産(株主等に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産及び株式交換に反対する株主に対する買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されなかったものをいう。 - ⑧ 外国株式交換完全支配親法人
株式交換の直前に株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国法人の株式をいう。
(4) 交付を受けた外国親法人株式等の取得価額
- ① 非居住者株主
非居住者が、その有する株式を発行した内国法人の行った特定合併、特定分割型分割、特定株式分配又は特定株式交換により外国合併親法人株式、外国分割承継親法人株式、外国完全子法人株式又は外国株式交換完全支配親法人株式の交付を受けた場合には、その交付を受けた株式が恒久的施設管理外国株式に該当するものである場合を除き、その交付を受けたこれらの株式の評価額の計算については、その交付を受けた時におけるこれらの株式の取得のために通常要する価額とされる(措令25の14⑤~⑧)。 - ② 外国法人株主
外国法人がその有する株式を発行した内国法人の行った合併、分割型分割又は株式交換により親法人(合併等の直前に合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係がある外国法人に限る。)の株式の交付を受けた場合又はその有する株式を発行した内国法人が行った株式分配により完全子法人の株式の交付を受けた場合には、その交付を受けた株式が恒久的施設管理外国株式に該当するものを除き、その交付を受けた株式の取得価額は、その交付を受けた時における株式の取得のために通常要する価額とされる(令184⑤)。
恒久的施設管理外国株式は、課税の繰延べが認められるのでその取得価額は旧株の簿価を引き継ぐこととなる。
恒久的施設管理外国株式は、課税の繰延べが認められるのでその取得価額は旧株の簿価を引き継ぐこととなる。