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[全文公開] 手数料の補償と非課税所得

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10月に発生した金融機関間の資金決済を担うシステムの障害で、障害発生時に振込ができなかった者も多いだろう。金融機関側では、利用者が追加で負担した手数料や遅延損害金などの実費を補償するケースもあるようだ。

例えば、個人の場合、本来であれば支払うことのなかった費用に相当する額を補てんする目的で受け取った金額は、非課税所得となる。ただし、受け取った者が事業所得者等の個人事業者の場合、必要経費に算入される手数料等を補てんするために受け取った金額については、非課税所得から除かれる。

所得税法上、非課税となるものには、心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料等のほか、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について支払を受ける損害賠償金等や、心身又は資産に加えられた損害に対し支払を受ける相当の見舞金などがある( 所法9 ①十八、 所令30 )。

一方、これら非課税に該当するものを規定する 所得税法施行令第30条 柱書きの括弧書きには、損害賠償金等のうちに、所得金額の計算上、必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合、その補てんされた金額に相当する部分については、非課税所得から除くことが示されている。つまり、補てん金額相当部分は、所得金額の計算上収入金額に含めなければならない。

例えば、個人事業者が支払った手数料7万円が必要経費に算入されるケースを想定する。このうち、本来払う必要のなかった手数料の実費(2万円)につき補償金2万円を受け取った場合、補償金の全額は既に必要経費に算入されているから、補償金2万円は事業所得の計算上収入金額に含めることとなる。個人事業者は、非課税所得に該当すると誤って判断し、収入金額に含めることを失念しないよう注意したい。