主要な中小企業優遇税制のかしこい選び方 第1回 主要な中小企業優遇税制と対象法人の範囲
税理士・公認会計士 長谷川 敏也
<プロフィール>
税理士法人アズール代表社員。中小企業の税務・会計支援を中心に、富裕層向けの相続・事業承継コンサルティングも手がけている。名古屋大学経済学部卒業。名古屋税理士会所属。支部長や常務理事を経験。現在、名城大学大学院法学研究科非常勤講師。主な共著に、平成14年から毎年の「税制改正の要点解説」(共著・清文社)や、「医療法人の法務と税務」「会社合併実務必携」「会社分割実務必携」「解散・清算実務必携」(共著・法令出版)、「会社相続の手引き」(加除版)(共著・新日本法規)などがある。
◎はじめに
中小企業向けの優遇税制は年々複雑化しています。税理士でも間違うことが多い分野だと実感しています。どうしてこうなったのでしょうか。
中小企業をめぐっては、「中小法人の実態は、大法人並みの多額の所得を得ている法人から個人事業主に近い法人まで区々であることから、そうした実態を丁寧に検証しつつ、資本金1億円以下を中小法人として一律に扱い、同一の制度を適用していることの妥当性について、検討を行う」(平成27年度与党税制改正大綱)とされ、その後「実態を丁寧に検証しつつ、資本金1億円以下の法人に対して一律に同一の制度を適用していることの妥当性について、検討を行う。資本金以外の指標を組み合わせること等により、法人の規模や活動実態等を的確に表す基準に見直すことについて検討する」(平成28年度与党税制改正大綱)とされてきました。
つまり、優遇税制の複雑さの多くは、「政策目的を実現したい」という意図と、「抜け穴や不公平を防ぎたい」という要請がせめぎ合った産物だと言えます。例えば、単純に「資本金1億円以下なら優遇」とすれば制度は簡明ですが、大企業が子会社を資本金1億円以下に設定して優遇を受ける抜け穴が生まれます。それを防ぐために「みなし大企業」の規定が加わり、さらにその判定のために大規模法人・保有割合・完全支配関係の概念が必要になる、という具合に、公平性を担保しようとするほど制度は複雑になります。
また、令和8年4月1日以後開始事業年度からは防衛特別法人税(付加税率4%)が課されることとなりましたが、課税標準法人税額の計算上、基礎控除額(年500万円)が控除されるため、法人税額が年500万円以下にとどまる多くの中小企業には実質的な負担は生じない仕組みとされています。ここでも中小企業への配慮が制度を一段複雑にしています。
以上の結果、何よりも実務において混乱を招くこととなっています。そこで、第1回では法人税法上、中小法人と中小企業者が異なることを中心に述べ、次回以降は租税特別措置法を中心に各制度を個別に見ていくことにします。...
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