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[全文公開] なるほど!純資産 ~基礎から学ぶ「純資産の部」の取扱い~ 第1回 別表五(一)の基本構造①

 税理士 武智 寛幸
 税理士 土師 秀作
 税理士 西山 卓

【略歴】

武智 寛幸

近畿税理士会 調査研究部員、神戸学院大学大学院法学研究科 非常勤講師、近畿税理士会 北支部副支部長、近畿税理士会 税法実務講座講師(法人税担当)、近畿税理士会 制度部副部長、近畿税理士会 理事 等

土師 秀作

近畿税理士会 調査研究部員、近畿税理士会 調査研究部副部長 等

西山 卓

近畿税理士会 近畿税務研究センター研究員 等


主な著書に『なるほど!純資産の部』(税務研究会出版局)(武智寛幸/村井淳一/土師秀作/西山卓 共著)がある。

(2026年10月現在)

1.はじめに

本連載では、法人税申告書の基本別表とされる別表五(一)の基本的な理解を、会計仕訳と税務仕訳の対比を通じて分かりやすく説明していきます。主な内容として、次のものを予定しています。

① 別表五(一)の基本構造

② 有償増資があった場合

③ 無償増資があった場合

④ 無償減資があった場合

⑤ 法定準備金の取崩しがあった場合

⑥ 利益剰余金を原資とする配当があった場合

⑦ 資本剰余金を原資とする配当があった場合

⑧ 自己株式の取得があった場合

⑨ 自己株式の処分があった場合

⑩ 自己株式の消却があった場合

連載第1回と第2回では、別表五(一)の基本構造について説明します。

2.別表五(一)の役割と基本構造

① 別表五(一)の役割

法人税申告書別表五(一)は、「税務上の貸借対照表」とも呼ばれ、法人税における純資産の部の金額(資産と負債の差額)を記載する別表です。

「会計における純資産の部」と「法人税における純資産の部」は、その金額や内容が異なりますが、法人税独自の純資産の部の金額を、その内訳とともに計算し、記録するのが別表五(一)の役割です。

利益(所得)に対する課税である法人税と所得税では、法人段階で行われた課税と、それが株主に分配された段階で行われる課税との間に、連続性があります。

法人段階で課税され、いまだ株主に分配されずに法人内部でストックされている部分の金額が「利益積立金額(別表五(一)Ⅰ)」であり、一方、株主から拠出を受けて法人内部でストックされている部分の金額が「資本金等の額(別表五(一)Ⅱ)」です。

これらの金額を別表五(一)で継続的に管理することにより、法人段階の課税と株主段階での課税とに連続性が保たれます(株主側でのみなし配当の計算に使われます)。

② 別表五(一)Ⅰ及びⅡの基本構造

別表五(一)を、左から右に向かって見た場合、左端に期首現在(前期末)の金額が、中央に当期中の増減が、右端に差引翌期首現在(当期末)の金額がそれぞれ記載されます。これにより、一事業年度の間での税務上の純資産の額の増減が記載されることになります。

別表五(一)Ⅰは、別表四との関係や、会計と税務とのズレの関係から、次の5つの項目に分類することができます。

本連載の第1回と第2回とで、具体例を交えて下記の内容を説明します。

<別表五(一)Ⅰの記載項目の分類>

別表四での税務調整と別表五(一)Ⅰとの関係 純資産の部の増減(変動) 項目 連載回
連動する 会計と税務とで異なる <別表四>留保項目 第1回
連動しない 未納法人税等
(これから納付する租税)
第2回
純資産の部の内部での振替
(資本と利益の振替)
会計と税務とで一致する 法定準備金・任意積立金・繰越利益剰余金(繰越損益金)など 第1回
<別表四>社外流出項目

3.別表四の留保欄と別表五(一)Ⅰとが連動する部分

会計上と税務上とで「損益の額」にズレが生じる項目は、その損益の額のズレを別表四に記載します。そのうち、会計上と税務上とで「純資産の額」にもズレが生じるものは、その純資産の額のズレを別表五(一)Ⅰに記載します。

別表四と別表五(一)Ⅰの両方に記載がされる税務調整は、別表四の留保欄にその金額を記載し、別表四と別表五(一)Ⅰを連動させます。

別表四と別表五(一)Ⅰが連動する税務調整を記載する部分は、下記の網掛の部分です。

(例) 期首帳簿価額900の建物について会計上で減価償却費を100計上したが、税務上の損金算入限度額は30であった(70が損金不算入)。

(イ)会計仕訳

(減価償却費)100  (建物)100

(ロ)税務仕訳

(減価償却費) 30  (建物) 30

(ハ)調整仕訳

(建物) 70     (減価償却費) 70

(会計上と税務上の純資産の額のズレの概念図)

4.純資産の額が、会計と税務とで一致する部分

上記3は、会計上と税務上とで「純資産の額」にズレが生じるものですが、会計上と税務上とでズレが生じないものもあります(通常は、会計上と税務上の「純資産の額のズレ」は、少額です)。

純資産の額にズレが生じないものには、①損益の計算にもズレが生じないものと、②損益の計算にはズレが生じるものとがあります。以下、順に説明します。

① 損益の計算にも、会計上と税務上とでズレが生じない部分

下記の項目(網掛の部分)は、会計上の金額がそのまま別表五(一)に転記され、貸借対照表の金額と別表五(一)の金額が一致します。利益準備金・任意積立金・繰越利益剰余金(繰越損益金)の各欄が、これに該当します。

なお、別表五(一)Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書では、資本金・資本準備金などが、これに該当します(詳しくは、第3回以降の連載で解説します)。

② 会計上と税務上とで、損益の計算にはズレが生じる部分(別表四社外流出)

会計上と税務上とで「損益の額」にズレが生じるものは、その損益の額のズレは別表四に記載します。そのうち、会計上と税務上とで「純資産の額」にはズレが生じないもの(会計と税務とで一致するもの)は、別表四では社外流出欄にその金額を記載します。

(例) 会計上で交際費200を計上したが、税務上は交際費の損金算入が一切認められない法人であった(期首の利益剰余金は2,400とする)。

(イ)会計仕訳

(交際費)200  (現金)200

※交際費200は、損益計算書を経由して利益剰余金の額を200減らします。

(ロ)税務仕訳

(利益積立金額)200  (現金)200

※別表五(一)Ⅰの「繰越損益金の「増」の欄」を通じて利益積立金額が減少します。

(会計上と税務上の純資産の額のズレの概念図)

※会計上と税務上とで、純資産の額が一致します