スペシャル・インタビュー IFAC(国際会計士連盟)元会長 Warren Allen 氏が語る

IFAC(国際会計士連盟) 元会長 Warren Allen

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◆欧州では社会的影響度の高い事業体(PIE)の法定監査に対して監査法人のローテーションを義務付ける規則が採択されましたけれども,どのようにお考えでしょうか。

監査の品質を高めるものであれば,いかなる変更でもサポートするのが我々の見解です。ローテーション期間については,5年とか10年とか,EU加盟国でも一致していないのが残念です。バラツキがあることで,実務上,何かマイナスの影響があるのではないかという懸念は持っています。数年経験した後に再評価を行って,予定した通り機能しているのか,品質を高めるという意味で効果があったのか,改めて見直す必要はあると思います。

◆監査報告書の見直しについては,どのようにお考えでしょうか。

監査報告書については,新しい基準が適用された場合,従来はたった1ページしかなかった監査報告書が,今後は複数のページになるでしょう。「重要な監査領域は何であったのか」,「監査のプロセスのなかで重要だと思って扱った分野は何であるのか」,「監査意見をまとめるにあたって判断を下さなければいけなかった重要分野は何であるか」を書くことが求められます。ゴーイング・コンサーンについても,包括的,全体的な意見を表明することを求められます。ある特定の企業について,ゴーイング・コンサーンで何か問題があるのであれば,それにきちんと注意を引きつけるようなことを書くことが要求されます。「この10年間において,監査人が関わる業務のなかでこの変更が最も重要な変更だ」と,一部関係者はコメントしているほどです。

英国では,一部の監査法人・会計事務所が,すでに1ページではない複数枚のものを作り始めています。それに対して,ユーザーが非常に関心をもって読んでいるという状況です。

◆統合報告が与える影響や会計士が果たすべき役割について,どうお考えでしょうか。

B/SやP/L,注記といった財務情報は,投資家のニーズに十分ではないと言われています。事業戦略の情報,ビジネスプロセスの情報,長期的な企業の持続可能性など,もっと情報が必要ということです。新たな統合報告という形態については,多くの投資家が評価しています。他の企業に先駆けて統合報告を採用した企業が,オペレーション上,大きなメリットを実感しているところにも注目したいと思います。

非常に近い将来,これらの統合報告について,独立第三者の立場から保証をしてほしいとい...