会計不正の構造【file 05】架空仕入割戻

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・タイプ(不正の種類):架空仕入割戻

・業種・業態:小売業

・手法・手口:架空の仕入割戻及び入金計上

今回は,本社事業部において複数の担当者の通謀により計上された架空の仕入割戻について取り上げる。

仕入割戻は,仕入リベートとも呼ばれ,仕入金額等に応じて,仕入先から受ける割戻をいい,会計上,仕入高から控除され,売上総利益(粗利額)を増加させる影響を及ぼす。他方,仕入先側では,売上割戻が発生することになる。

商品や役務の授受それ自体を対象に会計処理を行う仕入取引や売上取引とは異なり,仕入割戻は,仕入取引を基礎に一定の合意内容に従って権利関係が成立する取引である。

ただし,合意の具体的内容については,対象期間,対象商品及び金額など多岐にわたり,一部商習慣として,正式な契約文書を手交しない場合もある。

監査人は,仕入割戻(費用の控除)の監査を実施するにあたっては,会社とその仕入先との間で合意された仕入割戻に関する内容および仕入割戻算定の基礎となる仕入取引の金額等を把握することが極めて重要である。また,未収仕入割戻(資産)についても,回収可能性はあるか,現金回収状況に関して異常はないか,十分に注意を払う必要が...