世界会計よもやま話 最悪を脱したか,現代重工業

愛知工業大学 教授 岡崎 一浩

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キャッシュ・フロー(CF)計算書の提供する財務情報の方が,損益計算書より新鮮で有用と言われる。本当だろうか。その例を韓国の現代重工業(証券コード9540)に求めた。

過去4年間の損益計算書にある当期純利益の累計は④2兆610億ウォンである。2011年での利益は①2兆5,590億ウォン,2012年でも②9,930億ウォンと好調であった。それが突然に2014年に③1兆7,690億ウォンの赤字である。これからどうなるのだろう。

そこで,会計の特徴に戻ろう。損益計算書には遅効性があり,当期純利益で遅れて会社の業績を報告する傾向にある。それに対して,CF計算書には先行性があって,営業CFは業績をいち早く報告する。現代重工業でも,既に2年遡る2012年に営業CFは⑭3兆4,590億ウォンと大幅赤字を報告した。損益計算書の2011年の当期純利益①が多すぎたのではないかと疑われても仕方がなく,実はCF計算書のこの⑭の方が重要であった。営業CFが赤字になるのは,異常中の異常であるからだ。

当期純利益は発生ベースで,CF計算書は現金ベースである。当然にタイミングの差が出る。問題は,そこでの期ズレがいつ解消された...