起業家物語~IPO実現に向けて~ 第7回 税効果会計

有限責任 あずさ監査法人 パートナー 佐藤和充
有限責任 あずさ監査法人 シニアマネジャー 鶴彦太
有限責任 あずさ監査法人 マネジャー 大橋剛

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この物語は,株式公開(以下,IPO(Initial Public Offering))するにあたって必要となる知識や会計処理,実務上の対応等について,とある実業家(平山文都)の起業ストーリーを通じて解説するものである。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

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今回は,税効果会計についての指摘である。X2年度の決算について, 税効果会計( ポイント1 を考慮していないとの指摘を受けた。

会社の経理はCFOの平野に任せている。平野は,日本商工会議所の簿記検定の3級を持っている。X2年度の決算は平野が実施したが,税効果会計を考慮して決算書を作成するのを失念したらしい。というよりは,税効果会計のことを良く知らなかったようだ。さすがに簿記3級だと,税効果会計まで詳しくカバーしきれていなかったようだ。

税金はちゃんと納めるようにお願いしておいたので,税金計算は一所懸命やってくれていた。これは間違いないとのことである。ただ,決算書を見てわかるように,会計上の利益(税引前当期純利益)と税金費用(法人税,住民税及び事業税+法人税等調整額)が対応しておらず,これを調整する処理を入れていなか...