Q&Aコーナー 気になる論点(160) IFRSと米国基準(3)

-ストック・オプション会計基準の改正-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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米国財務会計基準審議会(FASB)は,2016年3月30日に,会計基準更新書(ASU)第2016-09号「株式報酬(Topic 718):従業員に対する株式報酬に関する会計処理の改善」を公表し,権利不確定による失効の処理を見直したようです。この結果,米国基準では,IFRSと異なり,当該失効分を利益に戻し入れることとなったのでしょうか。

米国基準では,これまでも,また,ASU第2016-09号の改正によっても,権利不確定による失効分については,費用を修正することとしており,この点は,IFRSや日本基準と同じです。ただし,今回の改正により,米国基準では,費用を,付与されたストック・オプション数から,権利不確定による失効の見積数を控除した数に基づいて算定する方法のほか,IFRSと異なり,権利不確定による失効が実際に発生したときに費用を修正する方法が,会計方針として認められることとなりました。

<解説>

FASBによるストック・オプション会計基準の見直し

ASU第2016-09号は,2016年3月に,簡素化のプロジェクトの一環として公表され,その主な改正の概要は[図表1]のとおりです。[図表1]以...