IFRSをめぐる動向 第86回 「のれん及び減損」プロジェクトの検討状況のアップデート

PwCあらた監査法人 公認会計士 富田 真史

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)の月次合同会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(Post-implementation review)の結果を受けて審議が続けられている,「のれん及び減損」プロジェクトに関する,直近のIASBの審議状況を取り上げます。

IASBは2015年6月のIFRS第3号の適用後レビューの実施結果に関するフィードバック・ステートメントの公表後,適用後レビューで取り上げられた論点のうち,特に重要とされた4つの論点(事業の定義の明確化,のれんの事後の会計処理,減損テストの改善,無形資産の認識及び測定)について議論を継続してきました。このうち3つの論点が「のれん」に関するものであることから,これらを一つにまとめ,リサーチ・プロジェクトとしては「事業の定義の明確化」と「のれん及び減損」の2つのプロジェクトとして設定されています。本稿では,このうち特に「のれん及び減損」プロジェクトを対象に,前回(第80回・本誌No.3...