会計不正の構造【file 09】在庫横領

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・タイプ(不正の種類):営業担当者の在庫横領

・業種・業態:機器製造販売,部材仕入販売

・手法・手口:仕入部材の横流し

今回は,ある地方営業所(A営業所)における営業担当者(甲氏)による関連部材の横流し不正事例を取り上げる。当該不正は,取引内容が不審であることにつき本社購買部にて発見されたものの,営業重視の組織風土で管理業務が手薄になるなか,不正行為が数年に及んだ後の発見となり,被害総額は7億円に及んだ。

本社から地理的に離れた地方営業所について,いかに会計不正を事前に防止し,または,早期に発見するのか,その有効な対策方法を検討する。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

会社は,機器の製造販売を行う老舗企業であり,補修等の目的で関連部材の仕入販売も手掛ける。経営陣は長期就任,株主は相互持合会社を含め安定的であり,社外取締役は1名である。国内に複数の主力工場,営業所を保有する。

(2)不正の動機および手口

営業担当者甲氏は,自らの借入返済と遊興費捻出のため,実需を伴わない部材の発注を本社購買部宛てに依頼し,荷受け業務を自ら遂行したうえで,近隣の業者(B社)に転売,代金を着服したものである。

2.判明の経緯...