M&A物語 第1回 M&Aの類型と買収戦略の立案

有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 パートナー 栗栖孝彰
有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 マネジャー 小瀧征太郎

( 10頁)
この物語は,企業の成長戦略としてM&Aを実行するにあたって必要となる知識や会計処理,実務上の対応等について,とある会社員(野口直大朗)の経験ストーリーを通じて解説するものである。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

*   *   *

野口直大朗は,都内の上場会社(機械メーカーのミノリ精機)に勤務する35歳のサラリーマンである。入社以来,工場,営業,経理と10年の間に様々な部署を渡り歩き,この4月から経営企画室に室長として配属された。野口に目をかけてくれている一心常務からは「わが社の成長のため,今後はM&Aを推進していく所存だ。そのために君を室長として抜擢したのだから,大いに頑張ってくれたまえ!」と言われたものの,経営企画室は私一人。いつもの丸投げ状況でやれやれといったところだ。

M&Aについてはほとんど何も分からないので,困っていたところ,ちょうど無料のM&Aセミナーの案内がきたので行ってみることにした。セミナーは,M&Aコンサルタントが野口のような初心者のM&A担当者向けに,手続の概要を解説してくれるもので非常に参考になったのだが,驚いたことがあった。講師が高校のラグビー部で...