IFRSをめぐる動向 第87回 「開示イニシアティブ」プロジェクト

(2016年5月までの動向)

PwCあらた監査法人 公認会計士 稲田 丈朗

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,2016年4月および5月のIASB会議で議論された内容を中心に,「開示イニシアティブ」プロジェクトの概要と最新の動向を解説します。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.「開示イニシアティブ」プロジェクトの背景

(1)開示フォーラム

2013年1月,IASBは財務諸表利用者,作成者,監査人,規制当局等を集めて「財務報告における開示に関するディスカッション・フォーラム」を開催し,財務情報の開示の有用性と透明性をどうやって改善させることができるかが議論されました。議論の結果IASBより同年5月に公表されたフィードバック文書の中で,財務報告における開示の質と量を改善していく取組みが必要であることが確認され,IASBが基準設定主体として主導権をとって検討することになりました。こうして立ち上がったIASBのプロジェクトは「開示イニシアティブ」と呼ばれ,開示のトピックに関する複数のプロジェクトから構成...