実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」に関する解説

企業会計基準委員会 副委員長 小賀坂敦
企業会計基準委員会 ディレクター 前田啓

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1.はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は,平成28年6月17日に,実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表した 。本稿では,本実務対応報告の概要を紹介する。なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.公表の経緯

企業会計原則では,重要な会計方針の1つとして固定資産の減価償却方法を示しており(企業会計原則注解(注1‐2)重要な会計方針の開示について),我が国においては,減価償却方法は,会計方針の選択として定められている。

また,減価償却に関する法人税法上の損金算入について損金経理要件が定められていること等に関連して,日本公認会計士協会から公表されている監査上の取扱い によって,いわゆる税法基準による会計処理が実務上一定の範囲で認められてきている。

ASBJでは,ASBJの設立直後の平成13年11月に,テーマ協議会③から,短期的かつ優先度の高いテーマの1つとして,固定資産に関する包括的な会計基準の開発の提言を受けたことを踏まえ,固定資産会計専門委員会が設置され,平成14...