IFRSをめぐる動向 第88回 IFRS第4号「保険契約」をともなうIFRS第9号「金融商品」の適用に関する審議(2016年3月から5月におけるIASBにおける審議)

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 川端 稔

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1. はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,2016年3月から5月にかけて行われた,IFRS第4号「保険契約」をともなうIFRS第9号「金融商品」の適用に関する議論の内容について解説します。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2. 検討の必要性

そもそも,IASBは,新しい保険契約の基準書については,IFRS第9号「金融商品」とともに2018年1月1日を発効日とすることを予定していました。しかし,審議の遅れから,IFRS第9号「金融商品」のみ,2018年1月1日を発効日とすることになりました。その結果,2018年から数年間,新しいIFRS第9号「金融商品」と現行のIFRS第4号「保険契約」の適用が必要とされることになりました(図表1)。これにより,保険契約を保有する企業にとっては,短期間に,金融資産の分類の変更についての検討を実施しなければならない状況になりました。このような問題点への対応のために,何らかの経過措置を設定する必要...