Q&Aコーナー 気になる論点(167) IASBにおける財務業績の議論(2)

-OCIのリサイクリング-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)は,今後,その他の包括利益(OCI)のリサイクリングについて,概念的な基礎を示すことができるのでしょうか。

A:

IASBが2015年5月に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」と同様に,それに対するコメントを踏まえたその後の議論においても,OCIのリサイクリングについては例外を示すようであり,概念的な基礎を示すまでには至らないと見込まれます。

<解説>

OCIのリサイクリング(1)‐EDの提案

EDにおいて,損益計算書は,企業の当期の財務業績に関する情報の主要な源泉であるため,すべての収益・費用が含まれることになることを提案していました(7.23項)。

ただし,すべての収益・費用が損益計算書に含められるという前提は,一定の場合に反証可能とすることを提案しており,この場合,収益・費用は,OCIに含まれます(7.24項)。

EDでは,収益・費用がOCIに含まれる例として,異なる測定基礎が用いられる場合を挙げていました(6.76項,7.25項,BC7.49項(a)(b))。

財政状態計算書のために用いることがレリバントな現在価値による収益・費用≠差異...