世界の会計事務所から 第6回 フィリピン 「ドゥテルテ大統領が超法規的改革?フィリピンの税務・会計」

KPMG フィリピン事務所 プリンシパル 矢野隆
KPMG フィリピン事務所 ディレクター 山本陽之
KPMG ジャパン ASEAN事業室 フィリピンデスク マネジャー 矢冨健太朗

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大統領選挙当日の朝は,まるで誰もがその結果を知っているかのように,意外なほど静けさに満ちていた。前評判どおり,"フィリピンのダーティーハリー","フィリピンのドナルド・トランプ"の異名を持つロドリゴ・ドゥテルテ氏の当選が確実だったからだ。当初は出馬を否定していたものの,2015年11月に出馬を表明すると,歯に衣着せぬ物言いにより低所得者層の圧倒的支持を集めた。最終的には約1,700万票を獲得し,2位のロハス氏に600万票の差を広げて大統領に選ばれることとなった。

大統領就任以前から,腐敗している組織は,税務当局(Bureau of Internal Revenue : BIR),関税当局(Bureau of Customs : BOC)及び陸運局(Land Transportation Office : LTO)であると名指しし,腐敗を徹底して撲滅することを宣言していた。就任後,一旦はメディアへの露出を控えたものの,最近は,麻薬密売人に対して行き過ぎた取り締りがあると言われ,国連と対峙したり,同盟国に喧嘩を売るような発言をし,連日メディアを賑わせている。

日系企業にとっては,今後フィリピン...