役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<195> 任期短縮に伴う現任取締役の損害賠償請求
弁護士 小林 公明
Q
取締役の任期短縮の定款変更により取締役を退任させられ,不再任となった者より,定款が変更された日の翌日から本来の任期満了日までの残任期間中の報酬相当額の損害賠償請求を受けたが,会社は支払うことを要するか。
A
1 結論
会社は退任不再任につき正当な理由が存在する場合には損害賠償責任を負わないが,これが存在しない場合には一定の範囲で責任を負う。
2 三つの争点
株主総会の決議によって「解任」された取締役は,その解任について正当な理由がある場合を除き,会社に対し解任によって生じた損害の賠償を請求することができる旨は会社法に明定されているが(339Ⅱ),質問は取締役の任期途中においてその任期を短縮する旨の「定款変更による退任不再任」の事案である。
まさに類似の事案につき,前掲会社法の条項の適用が問題となった判例(東京地判平27.6.29判例秘書LLI/DBL07031033。判時2274号113頁。以下「判決」という)がある。
質問に関係する,この判決の争点の主なものは次の三つであり,以下順に述べる。
(1)そもそも退任者は取締役に選任されたのか
(2)問題の定款変更により当然に取締役から退任するか
(3)取締...
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