先読み 会計・監査トレンド Topic 4 Data Analyticsで変わる監査

あずさ監査法人 次世代監査技術研究室長 公認会計士 小川 勤

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1.はじめに

本稿ではData Analytics(データ分析)により監査実務がどのように変化するかについて"ちょっと先"の将来を読む。

現在の監査実務を一言で表現すると,監査をより効率的かつ効果的に実施すべく,リスクの高いエリアに監査資源を配分する「リスク・アプローチ」をベースとして,主として一部の取引のみを検証する「試査」により実施されている。近年においては,ITの発展や,いわゆるビッグデータの利用により,母集団全体に対して何らかの監査的検証を行う「精査的手法」 が導入されつつある。具体的には仕訳の全件分析や売上取引のうち特定の母集団全体の財務及び非財務データを用いた分析等があり,それらはデータ分析技法を用いた監査手続として位置付けられている。

このような状況下,Data Analyticsのさらなる拡大,つまり対象となるデータ("Data")の範囲の拡大,そして新たな分析技法("Analytics")の開発が,ITのさらなる発展と相まって,"ちょっと先"の監査実務がどのように変化するかについて,検討をしたい。

2.監査実務のこれから

(1) 3つのキーワード

前述の通り,現在の監査実務は「リ...