書評 西川郁生(編著)/秋葉賢一,長谷川茂男,石川博行,柳良平(著)『企業価値向上のための財務会計リテラシー』

(日本経済新聞出版社刊/本体2,800円+税)

日本銀行 金融機構局考査役 考査運営課考査運営グループ長 鈴木直行

( 29頁)

本書は,企業のCFOをはじめとする方々が,コーポレートガバナンスの担い手として必要となる,インテグリティ(誠実さ)と財務会計・ファイナンスのリテラシーを身に付けることができるよう,会計基準の開発および国際的議論を長年主導してきた西川郁生・慶應義塾大学教授,秋葉賢一・早稲田大学教授をはじめとする,会計および企業価値の理論・実務の最前線を熟知する第一人者の英知を結集したものである。

なぜ,今,CFO等のガバナンスの担い手にインテグリティとリテラシーが一段と求められるのか。近年のコーポレートガバナンス改革により,社外取締役の導入等の枠組み整備が進んでいる。もっとも,ガバナンスの先進企業とされていた大手企業における会計不祥事は,枠組みを整えるだけでは不十分であることを浮き彫りにした。「形だけのガバナンスと実態のあるガバナンスとどこが違うのだろうか」との問いに対して著者は,東芝の事例分析も踏まえつつ,ガバナンスの担い手のインテグリティと会計リテラシーの欠如が形だけのガバナンスの背景にあると指摘する。

本書の前半では,会計不祥事の教訓(誘因や端緒等)も確認しつつ,ガバナンスの担い手が備えるべき財務報告...