新春特別寄稿 ディスクロージャー・企業会計等をめぐる動向

金融庁 総務企画局 企業開示課長 田原 泰雅

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一 はじめに

平成28年,企業開示行政には様々な進展があった。まず,コーポレートガバナンスについては,引き続き有識者会議においてスチュワードシップ・コード,コーポレートガバナンス・コードのより実質的な普及・定着に向けた議論が行われ,2月に「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」,11月に「機関投資家による実効的なスチュワードシップ活動のあり方」に関する提言が取りまとめられた。

企業の情報開示については,一昨年から昨年にかけて企業と投資家の建設的な対話を促進する観点から総合的な検討が行われ,4月に報告書が取りまとめられた。また,報告書の中で提言された投資家への公平・適時な情報開示を確保するため,「フェア・ディスクロージャー・ルール」の導入に向けた具体的な検討が行われ,12月に報告が取りまとめられた。

会計監査については,一昨年,東芝の不正会計事案などを契機として設置された懇談会において会計監査の在り方について検討が進められ,3月に提言が取りまとめられた。また,この中で提言された監査法人のガバナンス・コードについて検討が進められ,12月に「監査法人の組織的な運営に関...