公認会計士・監査審査会における2016年の振り返りと2017年の展望

公認会計士・監査審査会 事務局長 天谷 知子

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1.課題を抱えてのスタート

一昨年,すなわち2015年,日本を代表する大企業による不正会計事案が表面化した。これに関連して,公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という)では,関係した大手監査法人に対し検査を行い,その結果,「監査法人の運営は著しく不当なものと認められる」と判断し,同年12月15日に,金融庁に対して,行政処分その他の措置を講ずるよう勧告,同庁は,本勧告及び不正会計事案の調査を踏まえ,同月22日に,当該監査法人や所属公認会計士数名に対し,処分を行った。

本件においては,大手監査法人の監査の品質管理体制が形式的には整備されていたものの,組織として監査の品質を確保するためのより高い視点からのマネジメントが有効に機能しておらず,これにより,

・監査の現場やそれを支える監査法人組織において職業的懐疑心が十分発揮されていなかった,

・当局の指摘事項を踏まえた改善策が組織全体に徹底されていなかった,

・監査の品質の確保に重点を置いた人事配置・評価が行われていなかった,

などの問題が生じていたことが指摘されている。

こうしたなか,金融庁においては,今後の会計監査の在り方について,関係各界の有識者から...