座談会 第三者委員会報告書の社会的意義と今後の課題<後編>

~過去の事例から何を学ぶか

日比谷パーク法律事務所 弁護士 久保利 英明
東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 遠藤 元一
プロアクト法律事務所 弁護士 竹内 朗
青山学院大学大学院 教授 八田 進二

( 16頁)

第三者委員会報告書格付け委員会の意義と役割

八田 それでは,具体的にどういう報告書が公表されていて,どのような評価がなされているのか。不幸にして将来,自社においても第三者委員会を設置するような事態になった時に,どのような視点で委員会を構成していくのかについて見本となるような委員会報告書もいくつかあると思います。第三者委員会報告書の格付け委員会は,社会的にも影響がある報告書に対する格付けをしてきたわけで,その結果はウェブサイト で全て公表しています。委員の評価はそれなりに分かれる場合もありますね。

【表】 第三者委員会報告書格付け委員会が格付けした不祥事

会社名(報告書の公表日)
1.株式会社みずほ銀行(2013年10月28日)
2.株式会社リソー教育(2014年2月10日)
3.ノバルティス ファーマ株式会社(2014年4月2日)
4.株式会社朝日新聞社(2014年12月22日)
5.独立行政法人労働者健康福祉機構(2014年12月17日)
6.ジャパンベストレスキューシステム株式会社(2015年4月28日)
7.株式会社東芝(2015年7月20日)
8.東洋ゴム工業株式会社(2015年6月22日)
9.株式会社王将フードサービス(2016年3月29日)
10.三菱自動車工業株式会社(2016年8月1日)
11.東亜建設工業株式会社(2016年7月26日)

厳しい法律・規則に基づいているわけではないので,評価は各委員の視点によって当然異なりますが,全体としてはかなり辛口の結果になっています。竹内先生は事務局長として,これまでの11回の格付けの結果をどう評価しますか。格付け委員会での議論を通じて見えてきた課題は何でしょうか。

竹内 格付けの結果,全員の評価がほぼ一致する場合もありますが,東洋ゴム工業の時には「B」もあれば「F」もあるというように,かなり分かれたこともありました。それは,各人が第三者委員会に込める期待のポイントがどこにあるかという違いだと思います。これまでの議論を見ていると,形式的な独立性とか外形的な独立性が整っていなければそもそも不合格という委員もおられますし,一方で,外形よりも中身を見て,精神的な独立性という言葉を使う時もありますが,それがでていれば一定の評価をする委員もいます。このあたりが評価の分かれ道になっているようです。

八田「久保利先生と國廣(正)先生は厳しい」なんて声もときどき...