会計上の見積り 実務上の留意点Q&A 第1回 固定資産の減損

新日本有限責任監査法人 公認会計士 山澤伸吾

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連載開始にあたって

企業のビジネスは様々なリスク要因の影響を受け,当初想定したビジネスの成果が得られるかは確実ではありません。その不確実性は,会計上の資産の評価や未確定の負債の認識などの会計上の見積りに影響を及ぼします。

会計上の見積りとは,資産及び負債や収益及び費用等の額について,キャッシュ・フローが確定するまでの期間,不確実性がある場合に,財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて,合理的に算定することです(企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」 第4項 (3)参照)。その会計上の見積りの不確実性が高いほど,見積りの幅が広くなりますので,会計上の見積りが合理的でない場合には,最終的に金額が確定する際に見積りと実績の差額が多額の損益として生じる可能性が高くなります。

このため,企業は重要な会計上の見積り項目を網羅的に把握し,各見積り項目の不確実性を理解して,それに応じた内部統制を構築して合理的な見積りを行い,適切な会計処理が行われるよう留意する必要があります。また,重要な会計上の見積りの変更を生じさせる事象及び状況を漏れなく把握し,会計処理に反映させる必要があります。...