いまさらきけない会計基準等と実務のポイント 第9回 繰延税金資産の回収可能性

新日本有限責任監査法人 公認会計士 中西 亮介

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1.はじめに

今回は「繰延税金資産の回収可能性」を取り上げます。従来,財務諸表作成実務上は監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下,監査委員会報告第66号)に基づき繰延税金資産の回収可能性の判断が行われてきましたが,平成27年12月28日に企業会計基準適用指針第26号「 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 」(以下,回収可能性適用指針)が公表されたことから,監査委員会報告第66号は廃止され,財務諸表作成実務上の繰延税金資産の回収可能性の判断は回収可能性適用指針に基づき行われることとなりました。とはいえ上記2つの考え方の枠組み自体は大きく変わるものではなく,回収可能性適用指針は監査委員会報告第66号をより実態に即した形で見直し作成されたものという位置づけとなっています。

しかし,なぜ繰延税金資産の回収可能性が重要な論点となるのか,回収可能性の判断はどのように行うのか,そもそも繰延税金資産や繰延税金負債とは何かも含め,今回は繰延税金資産の回収可能性の判断を行う上で実務上重要なポイントとなるものの,基本的な事項で,いまさらきけないポイントを解説します...