CFOに必要な財務リテラシーとは何か?第1回 日本企業の保有する100円は50円に見なされている?

東洋大学客員教授・エーザイ常務執行役CFO 東洋大学客員教授・エーザイ常務執行役CFO 柳 良平

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1.日本企業の現金100円の価値は50円?‐不都合な真実

「日本企業の保有現金を50%で評価する。100円を50円とみなす」と海外投資家に頻繁に言われる。これはなぜだろうか?

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2016年10月末現在,東証上場企業のうち金融を除く3,508社の保有現金は95兆円,有価証券も加えると180兆円にも上っている。そして,現金のほうが時価総額よりも大きい会社は228社(6.5%)あり,平均のPBR(株価純資産倍率)は0.59倍である。さらに,「現金+有価証券」が時価総額を超える会社は532社(15.2%)あり,PBRは0.59倍である。また,「現金+有価証券‐有利子負債」(ネットキャッシュ)が時価総額を超える会社が185社(5.3%)もある。PBRが1倍未満ということは,時価総額が会計上の純資産(簿価),つまり解散価値を下回っていて,極端に言えば,「今すぐに上場廃止して,会社を清算して代わり金を返してもらったほうがましだ」と市場に言われているのに等しい。また,ネットキャッシュが時価総額を上回るなら,端的には「その会社を時価で買収して借入金をすべて返済してもおつりがくる」ことを意味す...