ハーフタイム 歴史から学ぶ将来予測

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企業は,経営計画や投資計画を練るとき,事業環境の現状をしっかり理解するだけでなく,将来についても確かな見通しを持つよう努める。個人も人生設計に,信頼できる将来見通しが欲しい。そのような目的に適う最もオーソドックスな方法は「歴史に学ぶ」ことである。「歴史は人生の教師」と言われているのは,過去を知らなければ現状を理解できず,現状を理解しなければ将来を見通せるはずはないからだ。

ところが性急な歴史予測は単なる"予言"に終わる。1989年にベルリンの壁が崩れ東西冷戦が終結した直後,米国の政治学者F・フクヤマは著書『歴史の終わり』で,自由と民主主義と資本主義の勝利,西側の最終勝利を宣言した。だがその後の結果を見ると歴史は終わっていない。ロシア・中国は支配権の拡張に野望を燃やす。勝ったはずの米国を始めとする西側諸国は内向きになり結束力を失う。かつての覇権国・英国はBrexit以降米国の植民地になるのではないか,トランプ大統領の米国は覇権国の看板を下ろし"理念なき商人国家"になるのではないかと囁かれる。自由も民主主義も資本主義も変質してしまったのであろうか。科学技術は確実に進歩しているが,世界は益々混...