有価証券報告書 作成上の留意点(平成29年3月期提出用)

公益財団法人 財務会計基準機構 企画・開示室  高野 裕郎

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Ⅰ はじめに

財務会計基準機構では,FASFセミナー「有価証券報告書作成上の留意点」を4月1日から14日にかけて全国9か所11回にわたり開催した。本稿は,同セミナーで説明した内容を基に,平成29年3月期の有価証券報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり,「経営方針」等の記載に関する留意点や,企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)から公表された企業会計基準等のうち,企業会計基準適用指針第26号「 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 」等に関する留意点を中心に解説する。

なお,文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅱ 「経営方針」等の記載に関する留意点

1 概要

平成28年4月18日に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告において,企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から,より効果的かつ効率的で適時な開示が可能となるよう,決算短信,事業報告等,有価証券報告書の開示内容の整理・共通化・合理化に向けた提言がなされた。

同報告において,従来,決算短信の記載内容とされていた「経営方針」の記載について,決算短信ではなく有報に...