上場会社の経理担当者が知っておくべきPPA実務 第1回 PPA(Purchase Price Allocation)とは?

株式会社Stand by C 公認会計士・税理士 角野 崇雄

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1.はじめに

今回からおおよそ10回にわたって取得原価の配分(Purchase Price Allocation)に伴う無形資産評価(以下,便宜的に「PPA」という。)について解説を行う。

PPAが2010年4月より日本の会計基準においても要求されるようになってから約7年が経過した。また,PPAが必須とされる国際会計基準(以下,「IFRS」という。)を採用する企業も増加し,日本でもPPAの実務が定着しつつあるが,まだまだ完全に定着しているとは言えない状況にある。更に,昨今の会計不正が起きている現状において,監査を取り巻く環境も変化し,それに応じて監査人の対応も厳しくなり,PPAも重要な監査項目になってきているのではないか。このような状況を踏まえて,上場会社の経理担当者が読まれることを想定して,PPAの基本的な考え方から,企業業績に与える影響,プロジェクトの進め方,監査対応などを網羅的に解説する。

2.過去から現在の状況

PPAの実務は,主に米国において確立されたものであり,長い間,多くの日本企業にとってPPAはなじみのないものであった。企業結合会計が日本に導入された後も,しばらくの間はM&A時...