Interview 制度も人も,世界をめざす ~国際会計人材の育成に向けて~

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関西学院大学,企業会計審議会 名誉教授,会長 平松一夫

 日本会計研究学会会長,世界会計学会の会長などを歴任し,国際会計研究の第一人者として,国内制度の国際化をけん引してきた平松一夫氏(関西学院大学名誉教授)。このほど,「企業会計審議会」(金融庁)の会長も務めることとなった。教育者としての功績も数多く,人材のグローバル化に向けても積極的な姿勢を見せている。長年にわたり研究,教育,公の立場から企業会計に関わってきた平松氏に,今後も引き続き重要なテーマとなる「国際会計人材の育成」などについて,これからのビジョンや方策などを聞いた。

Ⅰ 会計基準の国際化と歩をともに

転機は97年の国際会議,国際化の波を感じる

-平松先生が最初に企業会計審議会に関わられたのは25年ほど前になると伺っています。

そうですね。ちょうど25年前の1992年5月に企業会計審議会の幹事に任命されたのが最初の関わりです。早稲田大学の新井清光先生が会長をされていました。5年ほど幹事をして,その後,臨時委員になりました。

新井先生とは学会でも特別委員会などに一緒に参加させてもらったり,研究活動を一緒にさせていただいたりしました。学会以外でもCOFRI(企業財務制度研究会)などでお世話になりました。いろいろご縁があったのだなと思っています。

-企業会計審議会の幹事や臨時委員をされていた頃は,日本の会計制度が国際化に向かって進み始めた時期でもありましたね。

1997年,西川郁生先生と山田辰己先生から当時のIASC(国際会計基準委員会)へ行くようにとの要請があり,IASCの組織の在り方などを検討する「戦略作業部会」(SWP:ストラテジー・ワーキング・パーティー)に参画することになりました。SWPのメンバーとして2年半にわたって議論に参加しました。

戦略作業部会が出した結論はわが国にとって驚くべきものでした。当時,わが国の会計基準はパブリック・セクターである企業会計審議会によって設定されていました。そこには常勤の委員はいませんでした。戦略作業部会は,アメリカのFASB(財務会計基準審議会)のようなプライベート・セクターで,常勤委員を擁する会計基準設定主体の設立を求めたのです。しかもそれは国によって支持されていなければならないのです。

IASC自体も変革しようとしていました。IASCは民間団体である各国の公認会計士協会が集まり,自由にI...