書評 橋本 尚/山田 善隆 著「IFRS会計学基本テキスト第5版」

(中央経済社刊/本体3,400円+税)

会計教育研修機構 理事・事務局長  新井 武広

( 32頁)

我が国におけるIFRSの任意適用は,ご承知のように,企業経営や金融資本市場のグローバル化を背景に,一定の要件を満たした企業を対象にして,2010年3月期決算から開始された。その後,IFRSの任意適用要件は,2013年6月の企業会計審議会の報告書「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」に基づいて緩和され,IFRSに基づく連結財務諸表の適正性を確保する取組みや体制整備のみとなった。その結果,IFRS適用可能企業は約600社から約4,000社に拡大したと言われる。そして,2014年以降は3年連続して日本政府の日本再興戦略の中で「IFRSの任意適用企業の拡大促進」が盛り込まれて,関係者において様々な施策が実施されてきた。このような経緯をたどり,IFRSの任意適用企業数は着実に増加し,2017年2月末時点では決定済み企業を含めて140社となり,時価総額は約145兆円と日本の全上場企業の時価総額に対する割合も約25%を占めるに至っている。また,東京証券取引所の2016年11月時点での調査では,IFRS適用予定の企業や移行を検討中の企業は252社を数えているので,今後もIFRS...