Q&Aコーナー 気になる論点(187) IASBによる開示原則の検討(1)

‐注記の位置づけ‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2017年3月30日に公表したディスカッション・ペーパー「開示に関する取組み-開示原則」(開示原則DP)では,基本財務諸表による情報と注記による情報を同じように考えているのでしょうか。

A:

開示原則DPでは,財務諸表の目的を達成するためには,基本財務諸表と注記が異なる役割を果たすと考えており,基本財務諸表の情報は,注記の情報よりも目立つことが示唆されるとしています。

<解説>

経緯

2011年アジェンダ協議において,財務諸表の作成負担が増大しており,また,財務諸表が利用者のニーズをどれくらい満たしているかについての懸念が示されていました(1.2項)。これに対応するように,IASBは,2013年に開示に関する取組み(Disclosure Initiative)のプロジェクトを開始しました(1.4項)。

また,IASBでは,2016年11月公表の「IASB作業計画2017年‐2021年:2015年アジェンダ協議に対するフィードバック・ステートメント」において,コミュニケーションの改善(Better communication)を促進するプロジェクトの完了を高い優先順...