実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の解説

企業会計基準委員会 ディレクター 前田啓

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1.はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は,平成29年5月2日に,実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表した 。本稿では,本実務対応報告の概要を紹介する。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.公表の経緯

「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年法律第117号)(以下「民間資金法」という。)が平成11年7月に制定され,PFI(Private Finance Initiative)事業の枠組みが設けられた。その後,平成23年に民間資金法が改正され,公共施設等運営権を民間事業者に設定する制度(以下「公共施設等運営権制度」という。)が新たに導入された(詳細は後述3(1)参照)。

上記を受けて,平成26年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」において,当該制度を活用する場合における事業環境を整備するために,会計上の処理方法の整理を行うこととされ,平成27年7月に開催された第24回基準諮問会議において,内閣府より...