IFRSをめぐる動向 第98回 コモディティ・ローン取引の会計処理

PwCあらた有限責任監査法人 米国公認会計士 小柳 千佳子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)の月次合同会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。

今回は,2016年11月と2017年3月のIFRS解釈指針委員会(IFRS-IC)で議論されたコモディティ・ローン取引の会計処理について取り上げます。なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.背景

IFRS-ICは,特定のコモディティ・ローン取引の会計処理に関して,実務に多様な処理が存在するとして,会計処理の明確化を求める要望書を受け取りました。

(1)取引の概要

コモディティ・ローン取引とは,貴金属等を第三者から借り受け,それを他の第三者に貸し付けてマージンを得る取引です。要望書により明確化が求められた具体的な取引の概要は以下のとおりです(図表1も参照)。

①報告企業(X社)は,金地金を第三者(A社)から一定期間にわたって固定の手数料で借り受ける(契約1)。

②X社は,借り受けた金地金を別の第三者(B社)に同じ条件でより高い手数料で貸し出す(契約2)。

③これらの契...