「監査事務所検査結果事例集」の公表について

~平成29年版の改訂を中心に~

公認会計士・監査審査会事務局 審査検査室長 梅本慶治

( 26頁)

はじめに

公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)は,平成16年4月の発足以来,公益の確保及び投資者保護の観点から,我が国における監査の品質の確保・向上のために監査事務所(監査法人及び公認会計士)への検査を実施している。

検査において認められた監査の品質管理に関する問題点については,検査先へ通知するだけでなく,上場会社等の取締役・監査役や市場参加者も共有できるように,主な指摘事例を「監査事務所検査結果事例集」として取りまとめ,平成20年度から公表し,毎年改訂している。平成29年版(以下「本事例集」という。)は,7月26日に公表したところである。

本事例集では,事例数の3割を直近の検査事例と入れ替え,記載内容も重要な事項について改訂を加えている。改訂のポイントは次のとおりである。

・ 「Ⅰ.根本原因と業務管理態勢」

大手,準大手など監査事務所の規模別に,ガバナンスと不備の根本原因との関係を解説したほか,監査法人自らが組織全体で根本原因の究明に向けた取組を行っている大手監査法人の事例を紹介している。

・ 「Ⅲ.個別監査業務編」

「財務諸表監査における不正」については,不正会計の重要性が一層増して...