会計不正の構造【file12】架空売上計上

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・タイプ(不正の種類):架空売上計上

・業種・業態:倉庫営業・サービス業

・手法・手口:請求書の偽造

今回は,ある地区事業所の事業所長による請求書偽造の事例を取り上げる。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

会社は,グループ会社全体で本州を中心として各地に20以上の事業所を有し,倉庫営業,物流サービス事業を展開する。

会社の経営管理の手法は,各事業所が,営業活動を行うとともに,得意先あてに請求書を発送する。併せて各事業所は,得意先あてに発送した請求書(請求書Aという)と同じ内容の請求書(請求書Bという)を本社経理部門あてに報告する。各事業所においては,基本的には,本社経理部あてに請求書Bを報告する前の段階で,担当者が請求書Aおよび請求書Bの合致を確認し,上席者が当該確認手続を実施しているか否かを確かめる。

一方,本社経理部門は,得意先からの売掛金回収額と請求書Bを照合して入金消込の手続を行い,両者の金額に差異がある場合は,その理由を事業所に確認する。

(2)不正の動機

倉庫営業の業績は,新規顧客(荷主)獲得といった,事業者自らの営業努力に加え,既存の顧客(荷主)の物流規模にも左右される。

今回の不正事例は...