Q&Aコーナー 気になる論点(197) 契約における取引開始日

‐企業会計基準公開草案第61号③‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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企業会計基準委員会(ASBJ)が2017年7月20日に公表した企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「会計基準案」)では,契約における取引開始日における手続等を提案していますが,それはいつを指すのでしょうか。

A:

会計基準案では,契約における取引開始日はいつであるか明示していませんが,契約を締結した日を指すと思われます。

<解説>

契約における取引開始日(1)‐会計基準案

2017年7月20日公表の会計基準案では,[図表1]のように,「契約における取引開始日」における手続等を提案しています。

また,企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「適用指針案」)においても,例えば,重要な金融要素の影響について約束した対価の額を調整するにあたっては,契約における取引開始日において企業と顧客との間で独立した金融取引を行う場合に適用されると見積られる割引率を使用する(適用指針案29項)ことなどが提案されています。

[図表1]

ステップ手続等1(契約の識別)顧客との契約が,契約における取引開始日において,契約の識別(16項)の要件を満たす場...