ハーフタイム 三銃士

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『三銃士』(1844)は,フランスの小説家A・デュマの代表作であり,日本でもお馴染みで好きな人も多い。主人公ダルタニアンが南仏の田舎からドンキホーテのような恰好でパリに向かうところから物語は始まる。途中で近衛銃士隊長トレヴィル殿あての紹介状がケンカの相手に奪われるハプニングはあるが無事パリに到着。アトス,ポルトス,アラミスという個性豊かな三銃士と出会い,固い友情関係で結ばれた四銃士は,宰相リシュリュー派の銃士たちと派手な立ち回りを演じる。

伝統的な騎士道精神を発揮して,王妃の首飾りを取り戻すために英国に渡り,これまたリシュリューが放った女スパイ・ミレディの巧妙な妨害工作を次々突破するところも見せ場である。子供の頃に読んだ本や映画はこのような活躍ぶりに焦点を当てていたから,リシュリューは悪役でありその一派と対決する武勇伝は空想的大衆娯楽作だと思っていた。

ところが史実はやや異なる。ダルタニアンのその後の生涯を少々調べてみると,宰相は情報目的にスパイを使ったとしても,悪役どころかむしろ愛国者ではなかったかと思う。スペイン出身の王妃と英国の宰相バッキンガム公との恋仲を牽制し,英国による仏国内の宗...