会計不正の構造【file13】売掛金の滞留の原因は早すぎる売上計上だった

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・タイプ(不適の種類):売上げの前倒し計上

・業態・業種:病院に対する医療器具製造販売

・手法・手口:検収基準からの意図的な逸脱

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

この会社は昭和62年創業の3月決算会社である。平成19年に東証へ上場し現在に至っている。この会社の売上計上のポイントは検収確認書兼受領書という書類の運用である。この書類に納品先のサイン(日付,署名)があれば,それに基づいて売上計上する。今回の問題は,製品納入と同時にサインされる運用にならなかったことにある。

フローは次のようになっている。

検収確認書兼受領書が営業担当者から病院に単独で郵送される。その一方,製品は生産技術部の出荷指示により病院へ配送される。製品が病院に納品されれば,予め届いていた検収確認書兼受領書に病院がサイン(日付,署名)をして営業担当者に返送し,それが経営管理部業務課に回付されて売上計上される仕組みになっている。

(2)不正の手口

この会社では,先上げ取引という言葉で売上げの前倒し計上を説明している。それは,実際の製品配送と関係なく検収確認書兼受領書が送付されることを利用していた。営業担当者の依頼によって,病院が発注確...