Q&Aコーナー 気になる論点(202) 負債と資本の区分

‐国庫補助金と償還可能株式‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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IASBが行っている概念フレームワークプロジェクトにおける負債の定義の下では,これまで議論されてきた国庫補助金や償還可能株式は,負債と考えられるのでしょうか。

A:

IASBの概念フレームワークプロジェクトに加え,資本の特徴を有する金融商品(FICE)プロジェクトの議論を踏まえれば,国庫補助金も一定の要件を満たした償還可能株式も負債にはならないと考えられます。

<解説>

負債と資本(1)‐概念フレームワークプロジェクト

IASBの現行の概念フレームワークにおいて,負債と資本は,[図表1]のように定義されています。

[図表1]

構成要素 定義
負債
(4.4項(b))
過去の事象から発生した企業の現在の義務(present obligation)で,その決済により,経済的便益を有する資源が当該企業からの流出が予想されるもの
資本
(4.4項(c))
企業のすべての負債を控除した後の資産に対する残余持分(residual interest)

IASBが行っている概念フレームワークプロジェクトにおいて,2015年5月公表の公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(概念ED)でも,現行と同様に2区分(bina...