世界の会計事務所から 第16回 チェコ 移転価格に係る税務調査

KPMG プラハ事務所 シニアマネジャー 加治 孝幸

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1.移転価格税制を取り巻く環境

チェコ共和国(以下,チェコ)は,安定したGDP成長率,低インフレ,教育水準の高い労働者及び主要消費地である西欧への玄関口として魅力的な投資環境にあり,外国からの直接投資を積極的に受け入れ,着実な成長を遂げてきた。日系企業も自動車産業を中心に,現在では250社を上回る企業がチェコに進出している。

その一方で,近年の世界的な景気の低迷やグローバル企業による租税回避行為は,世界各国の税収にマイナスの影響を与えており,チェコの税務当局も例外ではなく,移転価格にかかる税務調査において,ますますアグレッシブなアプローチを採用している。

最近は,「当局による移転価格調査が厳しくなったと聞いていますが,具体的にどのような手法で調査が行なわれるのですか?」,「他の日系企業で移転価格文書の整備に着手したと聞きましたが,弊社も移転価格文書の作成を検討した方がよいのでしょうか?」等の質問を受けることが多くなった。

そこで,以下においては,チェコにおける移転価格調査の現状を解説する。

2.移転価格調査におけるチェコ税務当局のアプローチ

移転価格調査において,税務当局は,企業の機能とリスク・プ...