新春インタビュー 佐川 宣寿 国税庁長官 税務行政の展望を聞く

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国税庁 長官 佐川 宣寿

 新年を迎えるにあたり,本誌では,佐川宣寿・国税庁長官にインタビューを実施した。2018年の抱負のほか,ICTやマイナンバーを活用した納税者の利便性向上のための取組方針,「パラダイス文書」など社会的にも関心が高い国際的な租税回避事案への対応などを聞いた。

――新年の抱負をお聞かせください。

国税庁におきましては,本年も引き続きその使命である「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ため,納税者サービスの充実に向けた施策の実施に努めるとともに,適正な申告を行った納税者に不公平感を与えないよう,悪質な納税者には厳正な姿勢で臨むなど,適正・公平な課税・徴収の実現に努めてまいります。

具体的に申し上げますと,納税者利便の向上に向けた取組として,計算誤りのない申告書を作成することができる「確定申告書等作成コーナー」を国税庁ホームページ内に設けており,御利用が初めての方でも自宅で操作しやすい環境を整え,更なる利便性の向上に努めています。

一方で,富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しや国際的な租税回避行為に適切に対処することにより,公平性を確保いたします。

加えて,引き続きマイナンバーの税務関係書類への記載の定着に取り組むなど,様々な課題について,しっかりと取り組むとともに,長期的な視点から,ICT化や国際化への対応についても,国税の将来像を見据えながら,しっかり取り組んでいきたいと思います。

――ICTを活用した納税者の利便性向上や事務運営の最適化についての今後の取組方針をお聞かせください。

マイナンバー制度の導入,経済取引のグローバル化,ICT・AIの進展など,税務行政を取り巻く環境が大きく変化する中で,今後とも,納税者の皆様の理解と信頼を得て適正な申告・納税を確保していくためには,税務行政の透明性の観点から中長期的に目指すべき将来像を明らかにし,それに向けて着実に取り組んでいくことが重要との考えのもと,平成29年6月に「税務行政の将来像」を公表いたしました。

具体的には,ICTやマイナンバーの活用によるデジタル化を推進し,税務相談や申告・納付手続をスムーズかつスピーディなものにするなど,納税者の皆様の利便性向上を進めてまいります。また,課税・徴収事務の効率化・高度化など,国税当局における業務改革を進め,こうした取組により創出したマンパワーを...