Q&Aコーナー 気になる論点(205) 仮想通貨と収益認識(3)

‐仮想通貨の売却‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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資金決済に関する法律(資金決済法)における仮想通貨が売却された場合,企業会計基準委員会(ASBJ)が2017年7月に公表した企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識基準案」)に沿って会計処理をすることになるのでしょうか。

A:

ASBJが2017年12月6日に公表した実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」では,直接的に参照可能な既存の会計基準は存在しないことから,仮想通貨に関する会計処理について既存の会計基準を適用せず,仮想通貨独自のものとして新たに会計処理を定めることを提案しています。このため,今後,仮想通貨の売却については,収益認識基準案ではなく,実務対応報告公開草案第53号に沿って,その損益を,当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識することになると考えられます。

<解説>

収益認識基準案の適用範囲

収益認識基準案では,IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」と同様に,[図表1]を除き,顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用することを提案しています(3項)。

[図...