新春特別寄稿 上場制度を巡る2017年の回顧と2018年の展望

東京証券取引所 上場部長 林 謙太郎

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1.はじめに

株式会社東京証券取引所(以下,「東証」という。)の運営する金融商品市場の役割は,多様な投資者における上場有価証券への投資を通じた資産運用・資産形成ニーズと,上場会社における有価証券の発行を通じた長期安定資金の調達ニーズとを,適切かつ効率的に結びつけることによって,経済全体の発展に貢献することにある。

この役割を十分に発揮するためには,市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼確保が必要であり,また,投資者及び上場会社双方のニーズの変化を的確に捉えつつ,利便性,効率性及び透明性の高い市場基盤を構築していくことが欠かせない。

こうした観点から,東証では,有価証券上場規程その他の諸規則をはじめ,上場会社に関する各種制度の整備及びそれらの適切な運用に努めている。また,近年では,民間投資の拡大,労働分配率の向上や株主への利益還元が日本経済の持続的な成長を実現する要素として強く意識されるなか,上場会社と機関投資家との間の「建設的な対話」がそれらを動かす梃子てこの役割を果たすことが期待されている。上場会社と投資者との結節点を提供する東証としても,引き続き,両者の対話を促進するための環境整備に貢...