注記実務の留意点 第5回 重要な後発事象

仰星監査法人 公認会計士 市川 宏輔

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はじめに

重要な後発事象は,企業会計原則の 注解1-3 「重要な後発事象の開示について」に規定されているため,財務諸表および計算書類(以下,財務諸表等という)へ注記が必要とされている。ただ,この規定を除き,包括的に重要な後発事象を規定した会計基準は存在しない。そのため,重要な後発事象に対する決算体制や会計方針は,各企業ばらつきが大きいと感じる。

実務上は,日本公認会計士協会より財務諸表監査の指針として監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」(以下,76号報告)および監査基準委員会報告書560「後発事象」が公表されており,これらを参考に重要な後発事象への対応が行われている。

重要な後発事象は,決算日以降に発生した会計事象を財務諸表等へ反映させるため,通常の会計処理と若干異なる決算業務が必要となる。また,包括的な会計基準も存在しないため,決算作業に効率的に織り込むことが難しい会計事象といえる。

ただし,コーポレートガバナンス・コードに示されているように,非財務情報も含めた適切な情報開示と透明性が求められる昨今の情報開示の動向を踏まえると,重要な後発事象を適切に開示するというこ...