私の会計史 theme15 経理マン30年の総括と若い人へのメッセージ

  藤田敬司

( 32頁)

本シリーズでは,入社直後の大阪財務部時代の6年間は省き,経理マンとしての30年間(1969年のブラッセル赴任から1999年の退職まで)に限定して,経理実務経験及び勤務中の様々な出来事を想い出すまま書き綴ってきた。過去の高度成長期の経験談が,これからの世界で活躍する若い人にとって,どれだけ参考になるのか不安に思うところもある。だが世の中が大きく変わるとすれば,「仕事はAI時代」,「人生は100年時代」に入ることだろう。

その変化を念頭に置きながら,また書き漏らしたことを追加して,締め括りたい。これからの日本企業を担う若い人にとって,何かの参考となれば幸いである。

1.経理マン30年の総括

初めから商社に入りたいとか,経理マンになりたいと思っていたわけではない。大学時代の4年間も新入社員時代の最初の6年間も会計とは無縁だった。もっぱら海外へ行きたいという単純な動機で商社に入り,海外勤務には経理は不可欠であり,経理マンならどこへでも行ける(営業マンは担当商品によって勤務地が限定される)と言われて始めたのが経理だった。

戦後の財閥解体を経て再合同した直後の三井物産には,旧三井物産時代の伝統とネットワー...