ディスクロージャーを巡る国際的な動向 最終回 IASBの基本財務諸表プロジェクト(3) (これまでに検討されたその他の論点)

企業会計基準委員会(ASBJ) 専門研究員 蔦永 竜一

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はじめに

本連載の第1回( No.3345 )でご紹介したように,国際会計基準審議会(IASB)は,財務報告におけるコミュニケーションの改善(Better Communication in Financial Reporting)の一環として,「基本財務諸表(Primary Financial Statements)」プロジェクトに着手している。

本稿では,基本財務諸表プロジェクトの範囲のうち,前回までに取り上げなかった論点として,行項目の集約及び分解表示,機能別表示と性質別表示,並びにキャッシュ・フロー計算書に関する議論をご紹介する。ただし,本プロジェクトは現在,IASBにおいて審議中であり,今後の審議の動向によっては本稿で紹介した内容が変更される可能性があることをご留意いただきたい。

また,特段の記載がない限り,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

行項目の集約及び分解表示

基本財務諸表プロジェクトの範囲を検討するにあたって,IASBが行った調査では,IAS第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS第1号」という。)において要求されている費用分析①における分解表示...