書評 西川郁生 著『会計基準の考え方 学生と語る23日』

(税務経理協会刊/本体2,600円+税)

 公認会計士 樋口 尚文

( 29頁)

IASC日本代表,日本公認会計士協会常務理事,ASBJ委員長を歴任され,慶應義塾大学の教授として会計研究の世界に入られた西川郁生先生の著作である。はしがきには,近年の財務会計の研究者の研究領域は,現実の会計基準のあるべき論から遠ざかっていると記されている。確かに,会計理論や規範研究を研究者が示すことは減っているのだろう。先生は,その点も気にされたのか,学究一筋ではないと断り書きをいれつつ,23日間の対話形式により,日本基準・IFRS・米国基準の要求事項の解説ではなく,基準設定の理論的,実務的,及び政治的な背景について考察されている。

先生は,別の著作において,会計基準設定主体は,市場関係者の意見集約の場であることを叩き込まれたと記されている。対話形式である本書において,対話の中身には,投資家,研究者,監査人,財務諸表作成者,及び規制当局など市場関係者の声も含まれている。様々な意見・要望を聞き巧みに整理され,IASBやFASBを含む国際的な基準設定主体とも対話,説得してきた先生の長年の含蓄が凝縮されている。

内容は本誌掲載記事を再編したものである。第1日目は,資産負債アプローチから始まり,日...