IFRSをめぐる動向 第106回 「のれん及び減損」プロジェクトの最近の動き

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 大澤 美幸

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)の月次合同会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。

今回は,IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(Post-implementation review)の結果を受けて審議が続けられている「のれん及び減損」プロジェクトについて,直近のIASBの審議状況を取り上げます。

IASBは,2015年6月にIFRS第3号の適用後レビューの実施結果に関するフィードバック・ステートメントを公表した後,適用後レビューで取り上げられた論点のうち,特に重要とされた4つの論点(のれんの事後の会計処理,企業結合で取得した識別可能な無形資産の認識,減損に関わる要求事項の改善,事業の定義の明確化)について議論してきました。このうち最初の3つの論点は「のれん」の構成要素に関するものであることから,これらは一つにまとめられ,リサーチ・プロジェクトとしては「のれん及び減損」と「事業の定義の明確化」の2つのプロジェクトが設定されています。

本連載においては,これまでも4回にわたり「のれ...