IFRSをめぐる動向 第107回 法人所得税以外の税金に係る支払

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 鈴木 理加

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)並びにIFRS解釈指針委員会(IFRS IC)等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,「法人所得税以外の税金に係る支払(IAS第37号「引当金,偶発負債及び偶発資産」(IAS第37号))」に関するIFRS ICにおける直近の議論の状況を取り上げます。

なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2. 背景

本件の始まりは,欧州証券市場監督局(ESMA)が,各国の監督局との共同で実施している財務諸表レビューの中で,欧州において,IAS第37号の適用に多様な実務が存在していると考えられる案件が検出されたことにあります。このような検出事項に基づいて,ESMAは,IFRS ICに対して,IAS第12号「法人所得税」(IAS第12号)の範囲に含まれない不確実な税務処理に係る支払の取扱いに関する要望書を提出しました。

この要望書に記載された事実,すなわち,IFRS上の取扱いの対象となる取引の前提は,以下の通りです。

①係争中の案件に係る税務当局への支払い

IFRS ...